Masuk女神刀を鞘に納める。 最早スピード勝負をするつもりはない。
「あら? 一刀に戻すんですかー?」
「ああ、どうせスピード負けする。だからここからは俺のオリジナルだよ」 「ほほーぅ、いつの間に? じゃあじっくりと見ないとですねー」そう言い放ち、正眼の構えをとるアリア。いや寧ろ信剣の構えだ。正眼から更に腕を高く挙げて伸ばし、刀を水平にして切っ先を相手の眉間に突き付けるように構える。無行の位とはまた異なる、相手の如何なる攻撃にも即座に対応可能な古流剣術にある防御特化の構え。相手の出方を見ながらも次の攻撃にも繋げられる、崩しにくい構えだ。
まあこういう知識は全てアリアから学んだものだが、改めて相手にするとなるほど確かに前方に掲げた剣が距離を取ってある、間合いに入り辛いし、崩しにくいな。「やりにくい構えだなー」
「そりゃあちゃんと対策しないとねー」だが防御に徹するってことは俺がやろうとしていることはまだ分からないってことだ。さて、通用するかどうか、やるだけやってやろう。
「いくぞ! アストラリア流ソードスキル!」
地面を蹴る!
「あら? 私の流派はそのままなんですねー」
そりゃそうだ、俺はそれ以外知らない。だが違いはここからだ!
「フェンリル・ファング・
剣に魔力ではなく魔法を纏わせる! こいつが俺なりのオリジナルだ。ただの属性魔力よりも、錬成された魔法の方が方向性も威力も強い! この3日で学んだことだ。
光り輝くフェンリル・ファング! アリアは相殺せずに後ろに躱して距離を取った。初めてアリアが回避行動をとったぞ。だがまだここからだ!「まだまだあー! アクベンス・ネイル・
今度は相手の視界を奪う闇の魔法だ!
ガキィ! ビシィ!
だが今度は視界を奪ったはずのアリアに刀と左指を折り曲げた左手の人差し指と中指の間で白刃取りされ、剣を掴まれた!
「これは……、心眼か!?」
眼を閉じたアリアに完全に止められた。
「惜しいですねー、神眼です。心眼の上位互換ですが、相手の発動する魔法の魔力の色まで視えます。だから視界を奪うダークに対応できたんですよー」
「なるほど、そいつはとんでもない上位互換だ。なら俺が剣に籠める魔法の属性まで丸わかりかよ、結構いけると思ったんだけどな」 「ムフフー、そうでもないですよー。これを使わせたということが、そのオリジナリティがかなり良い線をいってるってことですからねー」 「そうか、そいつは光栄だ。なら出し惜しみはなしだぜっ!!」剣を構えなおし、次の攻撃を放つ!
「うおおおおおおお!!! サンセット・リープ・
上段から沈みゆく太陽の様な軌跡の撃ち下ろしに炎の爆撃が加わる!
「
陽が昇る様に、地面ごと斬り上げる剣閃!
カッ!! ドオオオオォン!!!
斬撃は防げても火魔法の爆撃までは防げない! アリアが初めて俺の攻撃を受けて後退した。属性は視えても魔法の種類までは完全にわかるわけではないんだな。
「このまま押し切る!!」
「むぅー、このー!」少々怯んだのか、アリアが魔法を撃ってきた、ストーンキャノンにアイスランスか、しかし何て数だ、ユズリハに撃った魔法より上位の魔法、でもこれなら斬れる!
「アストラリア流ソードスキル、ブレイク・スペル!」
ズバババババアッ!!!
魔法を斬るためのスキル! アリアもたまらず距離を取った、ここで決める!!!
「ストーム・ロンド・
嵐の6連撃に氷魔法の吹雪が加わる! 寧ろブリザード・ロンド! 氷雪系は凍てつかせることで相手の速度も奪う、そこへ風の6連撃だ、これで決まってくれ!!
ピキィーーーーーン!!
分厚い氷壁に全て遮られた、この強度、アイス・ロックじゃない、上位の
「くそっ、ダメだったかー……」
氷壁の向こうからアリアの声がする。
「いやー、アイデアは素晴らしいですよー、とんでもないセンスですねー! ただ、まだまだ剣術の練度が低いですねー。だから魔法はトリッキーでも完全に防御に徹すれば防ぎきれるということですー。でも大したものですよー、私を防御に集中させたのですからー」
勝ち誇ってるなあー、だが事実だ、崩しきれないと意味がない。でもなこれで終わりじゃないんだぜ!
「おっと、まだ勝ち誇るのは早いと思うぞ」
「えっ?」 「俺も色々と一人で試してみたんだよ、魔法の属性の融合ってやつを。火と氷、水と風、雷と土っていう感じでね。その中で一番ヤバい組み合わせを見つけて鍛錬したんだよ、まだまだ精々2属性だし、付け焼刃だけどな…、奥の手ってのは更に奥の手を忍ばせておくもんなんだぜ!」剣をその場に突き立て、それぞれの手に異なる属性の魔法を具現化する。
「それは聖と闇!? カーズ、危ないからやめて!!!」
「お、さすがアリアは知ってたか。ならこれが今の俺に出来る最大魔法だ、まだ初歩の魔法しか合成できないけどな!」魔力をつぎ込み圧縮させる。
「右手からホーリーランス、左手からブラックボルト」
そして具現化した概念を両手を合わせて1つへまとめる。相反するエネルギーを融合する反発力がバチバチと音を立てるほど強烈。まだ初級だが、この聖魔融合は触れたものを消滅させる程の副次効果が生まれるということは実験して分かっている!
「聖魔融合、いくぜ合体魔法ホーリー・ブラックボルト!!!」
融合した概念を投げつけるよう発射する。白く輝く聖なる槍に黒い電撃がバチバチと絡みつくように融合した魔法だ! フリージング・コフィンを突き抜ける! 俺の魔力はもうほとんどない、さあどうする、アリア?
チキッ!
抜刀術の構えをとるアリア、マジかよ、相殺するってのか?
「アストラリア流抜刀術・奥義」
奥義か、初めて見るな。
「
カッ!!!!
合体魔法に向けて突進し、繰り出される超魔力を纏った神速の一閃! その威力に空間さえも切り裂かれ、まるでストレージを開いたときの異空間へと繋がるかのような斬撃痕が空間に刻まれる! それが俺の魔法をも切り裂いて飲み込んだ。同時にアリアは後ろを向き、納刀。
カチーン、とその音が響く。その瞬間、空間に刻んだ斬撃痕からとんでもない威力の魔力と剣圧の渦が放出され、巻き込まれる! 体がバラバラになったかと思うほどの衝撃波が俺を飲み込む、何もできずにその威力の奔流に後ろへ吹き飛ばされた。視界が闇に沈む……。 ・・
・
「あ、れ、俺は……?」ほんの数分気を失っていたらしい。しかもどうやらアリアに膝枕されているようだ。全身が超痛くて痺れたように感覚がない。これは全身の骨がバキバキだ、全く動けない。ここまでの怪我したことないぞ。
「もう、無茶が過ぎますねー、やれやれ」
上からアリアの声がする。でも声が出ない、死んだな俺。
「
アリアが唱えると一気に体中から痛みが消えた。完全回復の魔法か、やっぱすげーな。とりあえず痛みは消えたし起き上がれそうな気がする。
「まだ寝ててくださいねー、装備のメンテナンスもしますからねー」
「装備?」ふと身体に目をやると、オリハルコン製のバトルドレスがズタズタになってボロボロだ。マジか……、これ着てなかったら即死だったろうな……。アリアのメンテで装備も復活した、綺麗に元通りだ。ようやく起き上がれるな。
あ、ヤバい少し体が女性側に引き戻されている。あの二人にバレるのはまずいので、魔力も分けてもらい何とか男性体を維持することはできた。だが起き上がれそうだったのに疲労で全く動けない。仕方なくそのまま大人しく膝枕状態だ。「あーあ、やっぱり負けたかー。分かっちゃいたけど悔しいもんだな」
「うーん、レベル差、基本能力の差がなければ分からなかったですねー。アイデアも驚きましたしー。でも私の加護がなければ死んでましたよ」あの一日一回致死ダメージを無効化ってやつか。でもそのレベル差が多分全てなんだろうなー、こういうのはRPGの数字の理不尽さと似ている。
「そっか、まあ女神様に褒められただけで御の字としとくよ」
もう終わったのが分かったのか、二人もこっちにやって来た。
「いやー、すげえ立ち合いだったな、目で追えない場面ばっかだったぜ!」
興奮気味のエリック。
「あのカーズがこんなにボロボロに負けるなんて、アリアさん、人間じゃないですよ……」
当たり、こいつ神様だからね。
「殺す気でいったんだ、でもまだ姉さんには歯が立たないな…」
「ふふ――ん、敬いなさーい」 「へいへい、普段はぐうたらなのになー」まあ3日の経験で我ながら良くやったもんだ。とりあえず自分を褒めておこう。
<レベルアップしました。スキルの更新を行います>
あれだけ神様とやりあったんだ、そりゃあ経験も増えるわな…。
「お、何だ俺らまでレベル上がって、ってマジか、何だこれ!?」
「私も40辺りでずっと伸び悩んでたのに…。二人の御陰で一気に倍以上よ! どうなってるの!?」エリックは82、ユズリハは84まで…。どんなパワーレベリングだよ。上がり過ぎじゃね? 一応俺も気になるな…、105……。いやいや、物語の序盤で100超えるって何だよ。いきなり強くてニューゲーム状態だよ! 超成長に経験値共有化、とんでもないな。
「とりあえず俺らのスキル情報は伏せといてくれ、こんなにすぐレベルが上がるとさすがに怪しまれるしな。それにこれなら極秘任務に向けての充分過ぎる準備になる。Aランクの試験もあるし、残りの日数はクエストがてらの鍛錬に当てよう。それにいきなりレベルが上がったんだ、自分のステータスに振り回されることもある、自己の能力の把握も同時にやっていこう」
「よっしゃーやるぜ、カーズに負けてはいられないしな」 「そうね、私ももっとアリアさんから学びたい!」生き生きしてるなー。そりゃいきなり壁を超えたんだ、嬉しくなるだろうさ。
「さて、もう日が暮れる。今日はここで野営だな」
そう言ったエリックにアリアが詰め寄る。急に起き上がるから、俺は地面に頭をぶつけた。痛いんだけど。
「いいえ、今日は宿の女将さんの手料理がたくさん待ってるんです! 帰りますよ」
「えー、アリアさん今から帰ってももう遅いよー」ユズリハも同じみたいだ。
「大丈夫です、転移でリチェスターに戻りますよ。カーズ、お願いします、私は空腹で力が出ませんー」
こいつ、めんどくさいだけだろー。
「そういや空間転移っていう時空魔法があったな。どうやって使うんだ、姉さん」
「んー、訪れた場所をイメージして発動するだけですよー、簡単です」 「なるほど、やってみよう。俺の体に触れてくれ」全員が俺の肩や腕に手を置く、じゃあやってみよう。意識をリチェスターのイメージに切り替えて集中。
「空間転移、リチェスター!」
フッ! っと全員の気配がその場から消え、気付くと街の入り口にいた。おお、すげえ、これ完璧ル〇ラじゃん。まさか自分が使うとは思ってなかったぜ。
「さて折角だし、みんなで女将さんの料理を食べようか」
「いいねー、カーズ気が利くわー!」 「俺も行くぜ、折角のお誘いだしな!」 「ううー、もうお腹ペコリーヌですー」また言ってるよ、それやめろって。こうして俺達は四人で女将さんの料理に舌鼓を打つことになったのだった。食料が底をついたのは言うまでもない、俺は女将さんに更に追加で食糧費を支払うのだった……。
あと一週間、油断は出来ない。やれることをやろう。それと、出発前にもう一度アーヤに会いたいな。なぜだか分からないが、そんな思いが巡る。だがそれ以上を考えると、頭痛に襲われて分からないままだ。俺の前世に関係あるのだろうか……。
でもまずは任務をこなそう、酷い寝相のアリアと同じベッドで疲労感に包まれながら、その日の晩は目を閉じた。ヨルムに乗って南門の外まで飛ぶ。「来い! 神剣ニルヴァーナ!」「お願い、ルティ!」「あいよー」「星芒より来たれ! クローチェ・オブ・リーブラ!」 各々が自分の武器を構える。南門前に着地させたヨルムから見る、南門に迫り来るベヒーモスの大軍。東門の方にも反応がある。黒や青や赤など、様々な色をした数十m以上はある巨体に、二本の巨大な角、四足歩行の全身を分厚い獣皮が鎧の様に覆われている。こいつは確かに並の武器じゃ傷一つ付けられないだろうな。 だが俺達には神格に神気、神器やそれに匹敵する武器がある。怖れることはない。そして神気を放った状態でヨルムと両親の再召喚を行った。陽子を破壊できる俺達にとっては紙切れも同然だ。「先ずは挨拶代わりだ。いけ、ヨルム!」「任せよ主! 受けろ、我が輝くブレスを!」 ドゴアアアアアアアアアアアアッ!!! 神気を纏った極光の竜の息吹が、放射線状に放たれ大地を敵ごと抉る! グギャアアアアアアア!!! 凄まじい威力のブレスに、迫り来るベヒーモス共が粉砕されていく。だがまだまだだ、俺の千里眼と鷹の目には、南東にある大迷宮から次々に敵が飛び出して来ているのが視える。どんだけいるんだ? 数万は下らないだろうな。だが俺達だけで掃討する!「アヤ、母さん! 南門の防衛と援護は任せる!」「任せて!」「はーい、漸く母さんの出番ねー」 ババッ! 飛び降りる二人。「イヴァ、親父! 東門にも反応がある! 二人はそっちを頼む!」「よっしゃー、行くぜ猫嬢ちゃん!」「任せるのさー!」 ダンッ!!「全員逆探知を発動させて自分達にターゲットを絞らせろ! エリック、ユズリハ、ディードは目の前の敵の掃除を任せる!」「はい! カーズ様!」「オッケー!」「任せときなー!」 ドンッ! 同時に飛び出す三人。「アリア、視えてるんだろ? 操られてる神獣達が」「ええ、神龍ケツアルコアトルにグリフォン、フェンリルにフェニックス。どうやら大将首は神鳥フェニックスに乗っていますね」「なるほど、ダカルーのばーちゃんの時と同じだな。アリア、グリフォンはお前がどうにかしろよ。ケツアルコアトルは、竜王兄妹、お前達に任せる! 行け!」「ハイハーイ、気が乘らないけど行って来ま―す」
舞台に乗ってストレッチをしていると、逆方向からハゲが上がって来た。「「「ハーゲ!!! ハーゲ!!!」」」 うーん、凄い声援だが地味に悪意を感じるな。まあ、あんなのでも国民には愛されてるのかな? とでも思っておくか。俺が毛根破壊したんだが、ちょっと不憫だ。「やはり貴様とは殺り合う運命のようだな。神殺しのカーズ!」 また変なことを言い始めたなあ。厨二か? やだやだ。それにダメージ肩代わり魔道具あるから死なねーよ。「いやいや、偶々くじ引きでそうなっただけだろ? 俺もあの竜騎士と闘いたかったんだけどなあー」「フッ、そうか。俺と闘うのが怖かったということだな」「いや、あいつの方が強いだろ? 意味の分からん敵意をぶつけてくるから、ぶっちゃけお前は面倒くせーだけだ」「おのれ…、貴様……!」「聞いたけどさー、お前自分がSランクの最速保持者だったんだろ? 所詮記録なんていつか塗り替えられるもんだ。今の最速はウチのニャンコだ。そんなしょうもない程度のことでイラついてたらストレスでハゲるぞ? あ、悪い、もうハゲてるんだったな。ごめんなー、ストレスかけて。俺に勝ったら治療してやるよ」 まあこいつの態度次第だけどね。「くっ……、貴様にはSランクの誇りは、プライドはないのか!?」 何だそれ? プライドチキンにプライドポテトか?「ねーな。そんなのしょうもないもんがあったら20ギールで売ってやるよ。後、ウチのPTが美人揃いだとか、邪神を斃したとか、そう言うのが気に入らないんだってな? 只のやっかみだろ。お前はガキか? そんなことにエネルギー割くくらいなら鍛錬でもしろよ、くっだらねーな」「貴様ああー…! 言わせておけば……!」 語彙が少ないなあ。そんなんで口で俺に勝てるとか思わないことだな。これでも元教師、アホなモンペのクレームとかで慣れっこなんだよ。いくらでも口が回るからな。『さて遂に最終戦ですが、ここまで我がリチェスター勢は連戦連勝。そしてリチェスター及び、現在世界中のSランク最強のカーズさんが相手。ハ、ゲフンゲフン、ガノン選手には打つ手がありますかね? アリアさん』『うーん、いや無理ゲーでしょー。レベルも3倍以上の開きがありますし、カーズはああいうヘイトばら撒く小物が大っ嫌いですからね。まあでも手加減しながら色々と技
魔導具を起動させて、エリックが舞台へと上がる。そして逆方向からは竜騎士のカセルが舞台へ跳び上がって来る。「「「カセル!!! カセル!!!」」」 凄い声援だな。先程のソフィアの時も凄かったが、この人は相当の人気だ。青銀と群青色の色彩の全身鎧だが、昨日の暗黒騎士のサウロンよりは軽量だ。頭にも竜の頭を模した様なヘルム。FF4の竜騎士みたいな装備だ。そして武器はやはり槍か。穂先が結構長めのスピアだな。刺突にも斬撃にも対応可能な2m程の長さの槍。鑑定、ドラグーン・スピアね……。やはりSランクか。何処で手に入れたんだろうな? 後で聞こう。 スピアとは英語で『槍』を意味する言葉の一つ。槍全般を指す場合は『スピア(spear)』が一般的だが、馬上槍は『ランス(lance)』、長槍は『パイク(pike)』など呼び分けはされている。最も、スピアタイプの槍をランスと呼んでいたりもして、呼称の使い分けは厳密ではない。 スピアとランスはよく混同されるが、決定的な違いがある。スピアは片手もしくは両手で扱うことができる歩兵槍のことだ。振り回し、先端に付いた刃で刺突・斬撃が可能。投擲用のスピアは『ジャベリン』とも呼ばれる。 対してランスは、中世から近代まで主にヨーロッパの騎兵に用いられた槍の一種。語源はラテン語で槍を意味する『ランケア(lancea)』、日本語では、『騎槍』とも訳される。単純に馬に乗った状態での専用武器のため、馬に乗ってない場合は全く使えないシロモノだ。 戦場だけでなく馬上槍試合でも用いられたランスは、『兜・鎧・剣・メイス・盾』と並ぶ、騎士を象徴する装備の一つであり、ファンタジーRPGなどでは、細長い円錐の形に『ヴァンプレート』と呼ばれる大きな笠状の鍔がついたものがよく描かれているが、必ずしも全てのランスがその形状をしているわけではない。 ランスと他の槍との決定的な違いは、基本的に刃物がついておらず、棒の先が尖っているか、前述した円錐型をし、敵対者を突き刺して攻撃するのが最も効果的な武器である点だ(この先端の形状は国によって異なる)。また、長さも特徴の一つで 一般的な片手武器の中でずば抜けて長く、4~5メートルを超えるものもあり(一般的なランスは扱い易くするため2m前後だが、それでも片手武器では一番長い)、接近戦闘用の
Sランク同士の興行試合の日になった。時間的には昨日と同じくらい。みんなリラックスしながら俺の部屋でスタンバっている。後は城の使いの人が迎えに来るのを待つだけだ。 昨夜の夜這い連中はアヤが目を覚ました時に、ベッドの左半分を占拠する様に鼾をかいてだらしなく寝ていた。そして事情聴取からの当然怒られていた。だからやめろって言ったのになあ。「「「「次はうまくやるし/やります/やるわー/やるのさ……」」」」 まあどう見ても反省してないけどね、こいつら……。全く、なんでこんなことをするんだか……? しかもまたやる気だし…もう知らね。「今日もアリアの姿がないということは……、やっぱり実況やるんだろうな」「昨日楽しそうだったもんねー」 アヤが答える。だよなー、絶対面白半分でやるだろうな。「盛り上がってたし、いいんじゃないの?」「今更なあー、あの人に何か言っても無駄だろうぜ」 エリユズの言う通りだな。あのアホは面白いと思ったことに対しては全力で命をかけてでも取り組むやつだからなあ。取り敢えず俺は両親がゲストに呼ばれないことを祈ろう。念の為に後で念話も送っておくか。「今日は恐らく昨日以上にレベル差がある分、更に一方的になるだろう。相手の仕掛けて来るスキルやら魔法、魔力撃も全て俺らに傷をつけられない。だから取り敢えずは一通り相手の手の内を見てやろう。俺達が先に仕掛けたら、そこで試合終了だ。一応イベントだし、多少は盛り上げさせないとな」「面倒臭いけど、仕方ないわよねー」「ちんたらしてたら先にしばきそうだけどなー」 この二人の戦闘狂なら充分ありえそうだが、折角の貴重な対戦だ。一瞬で終わらせるのは勿体無い。「まあ、そうかも知れないけどなあ。一応相手の戦術やらを見てみようぜ。相手のが俺達よりも形式上は先輩なんだし。あ、そう言えば俺はあのハゲと対決させられるんだろうか? ぶっちゃけ嫌なんだけど」「昨日の対戦順とかも勝手に決められてたし、違う相手かも知れないよ?」 アヤが言う様に、確かにプログラムとかもなかったし、世界的なイベントの割には意外と杜撰だよな……。勝手に実況までやってたくらいだし。盛り上がれば何でもいいのかね? 文化が中世だしそこまでキッチリじゃないのかもな。「そうだな。まあ誰が相手でもいいか。あのハゲは豪
うーん、どうしてこうなった……? 二回目。 城下のお祭りから、まだ食い続けているアリアを放置して某人気走る娘の様に腹ポコ状態のイヴァとルティを回収して帰って来た迄はいい。そしてみんなで一旦風呂にしようということで大浴場に向かった。普通は男湯に入るよね? でも女性体状態でピンクの浴衣に髪の毛も飾られている状態で男湯の暖簾を潜ろうとしてた俺は、女性陣に全力で止められた。まあ、冷静に考えたらこの状態で入るのは問題あるよね。中で男性体に戻ればいいんだが、その前に絶対に全身を「なんだなんだ?」って感じで見られるだろうし……。 でもね、躊躇なく女湯の暖簾を潜れる程、俺は自分を捨ててないんだよ。女性陣に散々説教されて、仕方なく女性体のまま女湯に入り、体を洗って、髪の毛は何故かみんなが我先にと言わんばかりの勢いで洗ってくれた。いやあ、ありがたいけどツラいな……。「お前は毎回無駄に苦労するよな……」 というエリックからの同情と憐れみの視線はともかく、「女風呂に堂々と入れるとか最高っすね、兄貴は!」 と思春期丸出しの発言でチェトレに蹴られていたアジーンにまで、変な気の遣われ方をされるというツラさ。まあね、見た目の性別は変えられるよ。でもねー、中身? 精神は男なんだよ? ウチの女性陣が多分おかしいんだろうと思っていたんだが、いや寧ろ気を遣ってくれているのかも知れないと最近は思う様になってきた。自宅でも女性陣の方が堂々と「一緒にお風呂に入ろうよ」と言って俺を連れて行く。その後で「女性体になってね」って言う感じで。 実際女性体の方がリラックスできるってのはある。男性体を維持するための全身の魔力の緊張を解きほぐすには女性体の方がいいんだよな。それに男性体でも顔の見てくれがね……、てことで男性陣は余り一緒に風呂ってくれない。全くこの思春期童貞共め……! 女性陣の方が度胸があると言うか恥じらいがないと言うか、肝が据わっている感じだ。一応男なので極力見ない様にしているけど、向こうは堂々と見て来るし、モロに触って来る。もうね、距離感がわからんのだよ。イヴァとかルティは子供と風呂ってる様な感覚、アガシャもそんな感じだ。まあ大抵はアヤも一緒だしな。と言うかアヤがいないとさすがに気が引ける。 タチが悪いのがユズリハやチェトレ、アリアのアホとくっついて
うーん、どうしてこうなった……? 祭典、夕暮れのお祭りの街中をみんなと歩いている俺は浴衣を着ている。いや、浴衣が悪い訳じゃないんよ。なぜピンクの女性用の浴衣もろもろのお祭りセットを着せられているのかということだ。そして仕方ないので勿論、女性体になっている。さすがに男性体の状態では違う意味で着れない。このお祭り堪能セットを用意していたのはやっぱりアリアだが、持って来たのはアヤだ。しかもノリノリで。みんなの分も頼んでいたらしい。「折角だから一緒に可愛い恰好をして、日本の夏祭りとか縁日みたいに過ごしたいなー」 などと目を輝かせて言うから、断れなかった。うーん、困った。着付けも髪の毛の飾り付けも全部アヤとウチのメイド組がやってくれた。もうこれまたノリノリで……。でもね、女性体の時の体を見られるのは何故かすんげー恥ずかしいんだよ。あー、いやマジ勘弁して欲しいけど、アヤがこういうシチュエーションも楽しみたいらしいので、もう今更だなあと逆らわないことにした。段々受け入れていってる自分がいるのは確かだが、アガシャに見られるのだけは一番キツかった。いやマジで。 バトル組の男性陣、エリックにアジーンは男性用の紺色やら暗めの配色の浴衣だ。城内で軽く飲み食いしながら待ってくれていた。って言うかそりゃ気まずいよ、それに俺も男性陣なんだけどね……。そしてユズリハにちょくちょく邪魔され悪戯された。クラーチでの悪夢を思い出すよね、これ……。言っとくけど、昔の日本の伝統みたいなことはしてないぞ。ちゃんと下も穿いてるからな。でも上は勘弁してください。 そしてお祭りセット一式をフル装備で城下に出て来たんだが、浴衣を着ている人が結構いることにも驚いたけど、夜店とか屋台とかも西洋のものと同じくらい日本ぽいのが結構あるんだよ。なんだろなあー、この世界は和洋折衷みたいな感じなんだよなあ。屋台には焼きそばとかたこ焼き、りんご飴、お面とか射的(コルク銃ではなくおもちゃの弓だが)、千本つりみたいなくじ引き(これはまず当たらないからやらない方がいいとみんなには言っておいた)、まあ千里眼や鑑定で視えるしね。うん、でも何だか懐かしい気分になる。 浴衣を初めて着るイヴァやルティは子供の様にはしゃいでいた。アガシャも初めて着たらしいが、少し照れ臭そうだったので、「可愛いし似合ってるぞ」と